寄り道ブログ
寄り道な人生をしています。読んだ小説や、見た映画・アニメの感想などを投稿していきます。
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講談社文庫 永遠の0 感想
永遠の0

 各所で話題になったこの作品。私は、発売当初から読んでみたいと思っていて、それが今更の読了となりましたが、話題作は否定的な目で見る私にしては珍しく、面白いといえる作品でした。

 上層部批判、戦争賛美、零戦礼賛・・・色んなところからアレコレ言われ、作者の百田さんも「かわいそうな作品」と称していますが、そのことについても、ちょっと触れたいと思います。この作品は、何を書いていて、何を伝えたいのか・・・それをちゃんと読み解けば、こういう感想は出ないはずですからね。

【概要】
 何も仕事をしていない主人公が、記者の姉から頼まれ、戦争体験を色んな人に聞いてまわるという内容の作品。劇的でドラマチックな展開というわけではないので(最後の方に少しだけありますが)、非常にスロウリィな感じがして、人を選ぶタイプの作品だとは思います。
 ですが、その体験記は興味深いものが多く、それを面白いと感じることができれば、読むスピードはどんどん早くなっていくんじゃないでしょうか。

【構成】
 主人公は、よく知らない祖父のことを調べるため、色んな人から体験記と一緒に、祖父のことを尋ねてまわります。基本的には回想の連続という形になりますから、最初の退屈感はハンパないものがありました。主人公が祖父の同期数人を訪ねていきますが、二人目くらいから、面白くなるという感じでしょうか。

 回想の連続という性質上、遅い展開と劇的なサプライズがないのは仕方ないですが、色んな人の話が出てくるという性質上、色々な人の体験が知れるという点、そして、祖父の印象が話す人によってまったく違うというのも面白い要素でした(最後には、主人公の本筋でも意外な展開が起こって面白いです)。

 ある人は「命の恩人」といい、ある人は「目の敵」という、主人公の祖父がどういう人なのか、読みすすめていけばいくほど、気になってくるというのは、こういう構成だからこそできた手法だと思いますし、その「祖父」のキャラクター性も素晴らしい。
 当時の時代には反した性格をしていたんでしょうけど、非常に現代的で、利口な人というのは、読んでいて応援したくなりますし、そんな祖父が時代に翻弄されてしまうところでは、とても悲しい気持ちになりましたね。

【作品を読む上で・・・】
 こういった作品で勘違いされがちなところは、この作品が「何を語ろうと」しているかを曲解したり、捏造したりして、論争の材料として使用する人がいるということです。

 作者の百田さんがおっしゃるように、この作品は、そういった槍玉にあげられてしまい、かわいそうな扱いを受けている作品といえるでしょう。
 ある権威の方がおっしゃるように、作品というものは、「崇拝」「批判」「衒学」するものではない、という言葉があります。

 まるで神の教えのように崇拝することは、盲目的な主張を持ってしまうからいけません。布教活動をしたり、他の作品を貶めるような行動に出てしまうこともあるでしょう。それが火種で、争いにまで発展することだって、宗教の歴史を見ていれば自ずと見えてきます。
 だから、崇拝なんてものはしちゃあいけないんですね。

 そして、批判することもダメ。まぁ、ダメということはないでしょうけど、批判したところで実りがないというのは事実です。
 嫌いならどこが嫌いか、どう改善すべきか、といった「一歩進んだ」議論に及ぶならいいのでしょうけど、批判というのはただの悪口に他なりませんし、自分も周りも気分を悪くするだけで、害悪以外のなにものでもないでしょう。

 そして最後に衒学ですが・・・これは、作品を利用して知識をひけらかすな、ということです。
 この行為は、もはや作品の評価など度外視していて、その人物が知識を披露したいだけの、自己顕示に他なりませんからね。こういう人から作品の正当な評価が聞けるとは思えません。

 そんなわけで、この作品は、以上のことを守れない人が多分に存在している、という意味で「かわいそう」なんだと思います。
 ある部分を執拗にあげつらったり、攻撃されたりするのは、そう「やりやすい題材」であることは間違いないでしょう。いわゆるイジメのような、攻撃的な本性を剥き出しにした人が読者に多かったのが、この作品の不幸でしょうね。

【読者的視点で】
 それじゃあ、どうやってこの本を読めばいいかという話ですが、この本に限らず、「面白いかどうか」が基準でいいのではないかと思います。変にメッセージや、作者の思惑などを推し量ろうとするからこそ、上記のような人たちは攻撃せずにはいられないんでしょうね(私もまだ未熟ですが)。

 私は、この作品は作中に色々な登場人物が出てきて、色々な視点から話をしてくれますから、作者の「これだ!」という意見のようなものは感じませんでした。そういう、色々な話を聞くことがメインの内容ですから、作者の意見というものは、極力排除していたようにさえ思います。

 あえて、この作品からメッセージを読み取るとしたら、「メディア(マスコミ)批判」と「自分で知って考えることの大事さ」でしょうか。
 あるエピソードで、昔話をしてくれる人が、マスコミを激しく批判するシーンがあります。その内容がとても共感できたということと、登場人物にマスコミ関係者がいて、その人めがけて激しく糾弾することからも、他の「昔話」とは違ったメッセージ性を感じました。

 事実、現代でも人心を掌握しているのはメディア(マスコミ)だと言えるでしょうし、その攻撃を、この作品自体が受けているこの現状からも推察できます。
 しかし、これも百田さんの本心とは限りませんから、私個人の解釈に留まりますが。

【総括】
 周囲の余計なノイズをシャットアウトして読める方であれば、読んでみる価値のある作品でしょう。
 戦争の貴重かつ興味深い話が読めるのは確かですし、それで得た知識をどういう風に受け止めて、どういう風に使うかは読者次第です。もちろん、作者への攻撃や、政治の主張などに使うのは感心しない使い方とは思いますが、読者の自由といえば自由なのは間違いありません。

 戦争というだけあって、専門用語などが多く、それが慣れていない人はちょっと読みにくさがあるかもしれません。戦争の小説というのは、だいたいそのあたりのハードルが高いのが難点でしょうか。
 私も、読みはじめたときは、胸焼けがしそうな用語の嵐でしたが、これはまぁ慣れが必要でしょうね。

 私はこれを読んで、戦争肯定も戦争否定もすることはできません。そもそもこれは小説ですから、正確な歴史資料とは言えませんし、歴史を語るためには情報が少なすぎます。
 作中で色んな人に話を聞いていたのも、マスコミを批判していたのも、すべては「色んな情報を集めて自分で考えろ」というメッセージだったように思います。
 そう考えると、この作品は歴史資料としては不十分ですし、単純に「面白いか否か」でいえば「面白かった」と答えざるを得ません。

 というわけで、永遠の0感想でした。

 色んな先入観や、声の大きな人によって、不遇な作品になってしまったことは間違いありませんが、一応はベストセラーとして多くの人に読まれた作品であることは間違いないですし、その実力は本物といえるでしょう。
 しかし、全体的に物悲しいビターな空気がただようのは間違いないので、各エピソードを辛抱強く読むような気概は必要かもしれません。
 私は、祖父のキャラクター性が素晴らしく、彼をもっと知りたいという感じで惹かれたため、最後まで読むことができました。まさに、作者が一番理想としている読み方ができたんじゃないかと思います。
 楽しみ方は人それぞれですが、それが選べるというのも、本作の魅力かもしれません。歴史の勉強のため、戦争の裏話を知るため、戦闘機による空戦描写、祖父という人柄の真相解明・・・実は色んな要素がいりまじっていて、意外と「楽しみ方」の懐が広いのも、この作品のすごいところでしょうね。
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