寄り道ブログ
寄り道な人生をしています。読んだ小説や、見た映画・アニメの感想などを投稿していきます。
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プライド
四月五週目にpixivに投稿した短編です。
 高校生のA君は、どこにでもいるような風貌で、身長も体重もこれといって書くことがないくらい平均的な、むしろちょっと大人しい雰囲気のある少年だった。
 けれど彼は、同年代の男子高校生たちとは違う部分が、ひとつだけあった。
「やめろ、みっともないぞ」
「ああ?」
 A君は、体育館の裏側でみかけたいじめの現場で、そんなことを堂々と言ってみせた。いじめっ子は四、五人くらいはいたが――そして、それぞれバットや木刀などを装備していたが、それすら歯牙にもかけない様子で、A君は言い放ったのだ。
 結果は当然、いじめの矛先が彼に向かい、いじめられっ子の代わりにボコボコにされたわけだが、A君はそんな役回りを率先して行う少年だった。
「あ、ありがとう……」
「たいしたことじゃないよ」
 お礼が欲しいからやったわけではないが、助けた相手から言われると、やってよかったと報われた気持ちになる。それが、A君には、自分の考えを貫くための支えの一部にもなっていた。
 そんな、体力的に厳しい生活を続けているA君のクラスに、転校生がやってきた。彼女はBさんという女子で、絆創膏や包帯、ガーゼなど、全身に傷があるという風采だった。そんな姿で、さらには威圧的な喋り方をするので、いくら転校生で美人でも、人がよりつくことはなかった。
 A君も、正義感や行動力はあるほうだが、社交性があるかと言えばそれは人並みくらいだったので、Bさんとはそれほど深く関わることはなかった。
 彼女がヤクザに絡まれているところに遭遇しなければ。
「………これから帰るところなんですが」
「そう言うなって、お嬢さん。どうせテメェたち一味は全滅させられるんだから、今のうちに謝ってこっちに寝返るなら、命だけは助けてやってもいいんだぜ?」
 詳しい会話内容はわからないA君だったが、どうも何かを強要していて、それをBさんが拒んでいることだけは理解できたので、いつもながら無謀に、彼らの間に割って入った。
「嫌がってますから、そこらへんでやめてあげたらどうですか?」
「あん? 小僧、お嬢さんの知り合いか? お節介は命を落とすぞ」
 いじめっ子の高校生とは比べられないほど筋骨隆々な体躯に威圧され、A君はさすがにうろたえた。そのときは砲丸みたいな拳に殴られるだけで済んだが、もう一度彼らと対面したとき、命があるとは思えなかった。
「……なんで、間に入ったの」
 Bさんが不思議そうに尋ねた。
「だって、キミ、危なそうだったし。命だけは、なんてことを言う奴に関わっちゃいけないよ。そんなことで死んだら本当に馬鹿みたいだし」
「私のこと、私の家のこと、知らない癖にそんなこと言わないで」
「え?」
 Bさんを家まで送り届けるという名目で、彼は帰路をご一緒した。そこで彼女の口から語られたことは、Bさんの家もヤクザの家庭だということや、先ほどの連中と抗争をしていること、そんな環境だから生傷が絶えないことなどだった。
「もともとそんな生活だから、あれくらいどうってことなかったのに」
「でも、そんなこと続けてたら死んじゃうよ。そうだ、家出すれば? 僕の家ならどうにかするし、もしそれが嫌なら、泊まるところを一緒にさがすよ」
「そういう問題じゃないの」
「何かプライドでもあるの? もしそうなら、そんなプライド捨てちゃいなよ! 命を捨ててもいいプライドなんて、ないんだからさ。命あってのものだねっていうじゃん」
「………ちょっと待ってて」
 彼女の家の前で、A君は待たされた。
 Bさんの家は敷地の広いお屋敷で、門を開いて彼女は屋敷へと入っていった。それから二分もしないうちに彼女は戻ってくると、握っていた黒光りしている拳銃を、迷いなくA君の腹部に向けて撃った。
「………あ、え?」
「サイレンサーつけてるから、あまり周囲には聞こえてないかもね。ああ、キミが知りたいことはそれじゃないか。彼らも言っていたでしょ? お節介は命を落とすって。もう聞こえてないかもしれないけど」
 彼女の言う通り、A君の耳はもうどんな音も拾っていなかった。
 意地を張って命を落とすことはない、というA君の主張は正しいかもしれないが、肝心の彼も、その考えを押し通したがゆえに命を落とした。
 A君も自分の主張――プライドを捨てていれば、死ぬことはなかったかもしれない。

テーマ:短編小説 - ジャンル:小説・文学

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